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8月, 2020の投稿を表示しています

マジシャンの書物

ちょっとしたきっかけがあって、昔読んだボナ植木氏(ナポレオンズ)の本の内容を思い出したので、図書館で借りてみました。 『書斎がいらないマジック整理術』 読み直してみて驚くのが、ボナ植木氏の文才です。いわゆる美文・名文というのではありませんが(ちょこちょこ自分の文への突っ込みが入るのは古臭い感じがしますが、それはご愛敬)、すいすい読めてわかりやすい。 洗練されたマジックショーが、よどみなく進んでいって、鮮やかに観客を驚かすのに似ている…そんな感想がわいてきました。 マジシャンの知性、技術、演出  同じくマジシャンの 前田知洋氏 のエッセイも、知的で謙虚、品があるのを思い出しました。「騙す」「驚かす」という性質を持つマジックを、娯楽として楽しめるものにするためには、礼儀や作法、言動や立ち居振る舞いに心配りが必要なんでしょうね。 ASCII.jpに『 前田知洋の“マジックとスペックのある人生” 』という連載を持っておられます。工学部出身の方らしい、電子機器についての解説が興味深いです。 驚くべき文の技 さらに、 泡坂妻夫 氏の多彩な小説も思い出します。自身の本名を冠した、厚川昌男賞というマジシャンを表彰する賞まで運営していた方です。『11枚のとらんぷ』は、マジックサークルを舞台にした連作で、個々の短編の出来も洒落ていれば、全体としての構成も素晴らしい。『奇術探偵曾我佳城』は、美しくも少し陰のあるヒロインが魅力的です。 技巧的な作品ばかりで、この方の作品を読むと「文章でこんなことができるのか!」と驚くこと必至です。「文章のマジック」と言ったら陳腐な表現になりますが… マジシャンの書く物 アイデアを発想し、技術を身に付け、演出をし、観客の心を操るすぐれたマジシャンには、文才が備わるのかもしれないな、と思いました。

40歳過ぎてからの勉強は、リベンジマッチみたいなところもありますけど

もう20年以上も前ですが、大学の授業でC言語を勉強しました。あんまり優秀でない私は、途中から授業についていけなくなり、困った挙げ句に生協で『プログラミング言語C』を買ったわけです。そう、K&Rです。 当然、授業でついていけなくなる程度の学生が、「本を買えばなんとかなるだろう」なんて浅い考えで手を出してもダメですよね。ポインタが理解できなかったのはもちろん、共用体という言葉を目次で見つけて「何だコレ?授業で出てこなかったぞこんなの」と思うのが関の山でした。 40歳過ぎてからの勉強は、リベンジマッチみたいなところもあります  そんな苦い思い出があるのに、就職した先はIT関連。(自分はエンジニアとしては三流か四流だなあ)という劣等感を抱えながらも、なんだかんだで20年やっているのだから、世の中なんとかなるものです(私の能力が低いせいで迷惑をかけた上司や先輩、同僚の皆さん、ごめんなさい)。 私がいま、学生時代によく理解できなかったことを、40歳過ぎて勉強しなおしているのは、この劣等感を克服したいから、という側面もあると思います。もちろん、そもそもは楽しいから勉強するんですが、そうはいっても、やり遂げて「あの時の私とは違うのだよ!」って言いたい気持ちはありますよね、やっぱり。 とはいえ、今からC言語を勉強してもあんまり使い途が無いので、書店で見かけたカーニハンの本を読むことにしました。『教養としてのコンピュータサイエンス講義』。翻訳は酒匂寛氏。この方もIT関連のゴツイ本の翻訳を、長いことやられてますなあ…凄いです。さらに解説が坂村健氏ということで、若い頃の僕が仰ぎ見た人たちばっかりです。 リベンジしようにも、専門家はさらに先を行っていた  もう上の見出しの通りなんですが、先端を行く専門家は、20年のあいだ立ち止まってはいないんですよね。本書は、500ページ近い本で、ハードウェア・ソフトウェア・ネットワークにセキュリティまで、広範な内容を簡明に説明しようとしておられます。 これからの人生も、このIT全盛の社会で生きていくのだから、こういう本できちんと勉強しておくと、きっと大きな財産になりますね。

科学雑誌の別冊を読む意義

 どの書店にいっても、科学雑誌としてNewtonと日経サイエンスは並んでいます。いずれも月刊誌ですが、海外の記事が中心で、一般向けの日経サイエンスと、日本で独自に編集され、中高生に対する教育的な意義も視野に入れているNewtonとで、誌面の違いがあり、両方読んでも面白いこと間違いありません。 そして、どちらにも、別冊があります。 Newtonの別冊 Newtonは、いろいろな判型で別冊や特集を出しています。本誌の特集記事の再編集が中心ですが、特に科学各分野の基礎的な話題について、中高生から一般に向けた啓蒙書が充実しています。いろいろな判型・出版形式があるので、選びやすいですね。 ニュートン別冊・ムック・増刊  Newton別冊が、本誌の特集をまとめた上に、当該分野の専門家へのインタビューや寄稿が追加されているかたちなので、最上位のレベルにあると思います。 Newtonライトはページ数少なめ・文字数少なめ・イラスト、イメージ多用で軽く読めます。 増刊は、Newtonライトに近い易しめのレベルで、月刊。本誌の半分くらいの価格設定。中高生にフォーカスしていると言ってよさそうです。 その他、雑誌・ムックの判型ではありませんが、『 ニュートン式 超図解  最強に面白い!! 』という書籍のシリーズがあり、こちらはNewtonライトと別冊の間に位置付けられる感じでしょうか。社会人で、ライトではちょっと物足りない、という場合に合いそうです。  日経サイエンスの別冊  一方、 日経サイエンスの別冊 は、やはり本誌記事を再編集したものですが、Newtonの別冊よりも、応用分野や、社会への影響のある分野に寄っているように思います。また、各記事の記述のレベルは高く、一定の基礎知識が無いと読むのに苦労するのではないかと思います。  先日、『感染症』を読みましたが、正直なところ、私には難しい内容が多かったです。でも、日本の新型コロナウイルス対策の専門家会議のメンバーへのインタビューなど、時事的な問題を正面から扱っていて、大変に力の入った誌面でした。   別冊は、複数号にわたる本誌の記事をまとめて提示してくれるので、特に今回の感染症の流行という事態のもとでは、とても勉強になります。時間の経過とともに、何が起きたか。科学者には何が分かってきたのか。人々はどう振る舞ってきたのか。  一度本誌で見

江戸の町を21世紀の目で見直す

土地の商業的利用、繁華街の様相、リサイクル 書名が『21世紀の「江戸」』ということで、一見「21世紀の今に残る『江戸時代』の文物を見つける」という趣旨なのかなと思いました。読んでみて、むしろ「21世紀に生きる我々の関心に基づいて、江戸の社会を見る」ということか、と思い至りました。本書で取り上げられている「21世紀の視点」は、次の三つです。 江戸の町の土地は、どのように利用されていたのか。繁華街(具体的には両国あたり)はどのような様相を示していたのか。紙のリサイクルはどのように行われていたのか。   さすがの日本史リブレットで、100ページほどの本の中で史料が丁寧に読み解かれていて、へえ、ほほう、と思うことたびたびでした。 土地の利用状況 まず、江戸のまちは、武士の町なんだということを教えられました。武家屋敷に使われている比率が高い。その比率、68%!ほとんどが武家屋敷だったんですね。 残った土地を寺社と町人が分け合って使っていて、本書では町の様子(時代劇で見るような長屋)などが描かれているのですが、なかでも当時の不動産取引の様子が述べられているのが面白い。一方で、(商品として取引されるようになった後も)土地が単なる商品になったわけではなく、人格性が残っていた、という話が述べられているのも面白いです。 繁華街 「両国」という盛り場が、実際のところどんな空間的な広がりをもっていたのか、橋や隣接する地域の状況に触れながら整理されています。また、橋や川岸が、いわば「民間委託」によって管理されていたことが述べられます。土地利用から収益を得ることを許すかわりに、公共空間としての維持・整備に費用と資源の負担をさせていたんですね。これは自分でもう少し掘り下げて、現代の民間委託との違いを考えてみたいなあ、なんて思いました。 リサイクル しばしば「江戸はリサイクルが行き届いた、エコの町だった」という言説を見ますが、著者はこう書いています(98ページ)。 一見すると高度にエコロジカルなシステムのようではあるが、しかし生産力の低位な段階が必然化した、即自的なシステムなのだといえよう ものを作る力が少ない時代だったので、そうするしかなかった、と。バッサリですね。零細な紙屑収集業者と、他の廃品回収業を兼業する業者とが、幕府に対して、組合設立の許可を巡って争っていたらしい、という話が興味深いです

あらためて「高校までの英語」って大事だなと

TOEICはいま大変なようなので、英検に鞍替え TOEICは、沢山の高校生の皆さんが受検するために大変なことになっていると聞いたので、英検に鞍替えしてみようかと思い立ちました。 「キクタン」二種(TOEIC L&Rテスト SCORE 990と、英検2級)を聞き比べてみました。SCORE 990の本の裏には、「英検準1級」という記載もあるので、準1級レベルと2級レベルを聞き比べた、とも言えそうです。 実際聞いてみて、私の程度の英語力(※数年前にTOEICで800点取ったことがある)でも、英検2級(高校卒業程度)のキクタンは、分かる語が多いです。 ここで改めて、高校までの英語の大切さを確認したことになりました。 ITエンジニアが読む技術文書の英語 IT系の仕事をしているとき、英語の技術文書を読むことがあります。Google翻訳など翻訳ツールのお世話になることも多々ありますが、意外に読めることもあります。条件の組み合わせや、譲歩などの表現が入ってくると途端に分からなくなるので、私は文法の理解が曖昧なんだと思います。 私の英語力全般の評価はともあれ、経験的にいって、IT系の技術文書は高校卒業程度か、TOEIC800点前後のレベルの単語で書かれているのかな、と思うのです。 (※厳密には、ドキュメント作成のガイドラインを確認したり、使われている語の統計を取ればいいのでしょうけど) 何度目か分かりませんが、もっとちゃんと高校までの勉強をやっておくんだったよ…と痛感しております。