スキップしてメイン コンテンツに移動

マジシャンの書物

ちょっとしたきっかけがあって、昔読んだボナ植木氏(ナポレオンズ)の本の内容を思い出したので、図書館で借りてみました。

『書斎がいらないマジック整理術』

読み直してみて驚くのが、ボナ植木氏の文才です。いわゆる美文・名文というのではありませんが(ちょこちょこ自分の文への突っ込みが入るのは古臭い感じがしますが、それはご愛敬)、すいすい読めてわかりやすい。 洗練されたマジックショーが、よどみなく進んでいって、鮮やかに観客を驚かすのに似ている…そんな感想がわいてきました。

マジシャンの知性、技術、演出

 同じくマジシャンの前田知洋氏のエッセイも、知的で謙虚、品があるのを思い出しました。「騙す」「驚かす」という性質を持つマジックを、娯楽として楽しめるものにするためには、礼儀や作法、言動や立ち居振る舞いに心配りが必要なんでしょうね。

ASCII.jpに『前田知洋の“マジックとスペックのある人生”』という連載を持っておられます。工学部出身の方らしい、電子機器についての解説が興味深いです。

驚くべき文の技

さらに、泡坂妻夫氏の多彩な小説も思い出します。自身の本名を冠した、厚川昌男賞というマジシャンを表彰する賞まで運営していた方です。『11枚のとらんぷ』は、マジックサークルを舞台にした連作で、個々の短編の出来も洒落ていれば、全体としての構成も素晴らしい。『奇術探偵曾我佳城』は、美しくも少し陰のあるヒロインが魅力的です。

技巧的な作品ばかりで、この方の作品を読むと「文章でこんなことができるのか!」と驚くこと必至です。「文章のマジック」と言ったら陳腐な表現になりますが…

マジシャンの書く物

アイデアを発想し、技術を身に付け、演出をし、観客の心を操るすぐれたマジシャンには、文才が備わるのかもしれないな、と思いました。

コメント

このブログの人気の投稿

映像制作の基礎を学ぶなら、放送大学『映像コンテンツの制作技術』

映像制作を学びたい スマートフォンやアクションカメラで撮影した動画を、うまく編集して、より面白い動画に作りこみたい、と思ったとき、意外に学びにくいことに気付きました。 書店では、特定の製品やソフトウェアのガイド書籍はすぐに見つかります。「YouTuberになろう」という本も増えました。が、より広く「映像制作」というテーマになると、途端に数が少なくなり、ハイアマチュアやセミプロを目指す人、プロの人の情報収集向けの雑誌や書籍がちらほら、という感じになって見えます。 中間(初心者が入門して、中級者になるまでのガイド)が少ない。 『映像コンテンツの制作技術』 そんなときに見つけて、受講してみたのが放送大学の『映像コンテンツの制作技術』という授業です。全15回で、カメラやマイクのようなハードウェア、映像編集・音声編集のためのソフトウェアはもちろん、企画や脚本、絵コンテまで、幅広く取り扱っています。 幅が広い分、底が浅いのでは…と思いきや、紹介されている機材は本格的で、現代の機器・ソフトウェアでどんなことが出来るのか、ざっと把握することができます。  逆に、特定の機材やソフトの使用方法は簡単に触れるだけなので(たとえば、編集の回にはFinalcut ProやDaVinci Resolveの画面がちらっと出てきます)、別にガイド等を手に入れる必要があります。 「プロは何をしているのか」「今の時代、どんなことができるのか」を知る 「今の時代の(プロ向けの)機材で、どんなことが出来るのか」「プロはどういう工夫をして、狙った映像を作っているのか」を知っていると、手元の機器で何をどうしたらいいのか、考えるヒントが得られると思います。 放送授業の視聴方法 私は放送大学の学生なので、放送授業のオンライン配信で視聴していますが、放送大学・大学院のテレビ(BS232ch)で、火曜日 16:30~17:15に放送されています(2022年10月現在)。 なお、テキストも市販されていて、 取扱書店 で購入できるほか、 Amazon などでも買えます。 ただ、やはり映像コンテンツの授業なので、テレビ放送を見るほうをお勧めしたいですね。

まだ僕には難しかった『映像制作モダンベーシック教本』

   「ベーシック」という言葉がタイトルに含まれていたので買ったけれど、ちょっと僕には難しかった。 数十ページ読んだところで、数か月放置… その間に、放送大学の授業『映像コンテンツの制作技術』 を半分ほど視聴しました。 さきほど再び本書を手に取って、ざっと眺めてみました。今度は少し分かるようになっていました。  家庭用のカメラや、スマホで撮影できて、編集もスマホやタブレットで出来る現在、さぞかし映像制作も簡単になったことだろう…と思いきや、そんなことは無い、ということがよく分かりました。 技術が進んで、撮影できる映像の質が上がった。照明や音声など、周辺の様々な器材も普及している。編集に使える技術や製品が増えたので、編集能力が制作するコンテンツの質を左右する。もちろん、シナリオやカット割りなども重要… これはこだわり始めると、キリが無いですねえ。「ベーシック」の水準が高いのが理解できました。 本書は、本格的に映像制作で生きていきたいという人のベーシックなんだと思います。私みたいなカジュアルにやりたい人がいきなり読み通すのはちょっとハードル高かった。時々見返して、知識を追加するのに役立てようと思います。

「情報Ⅰ」の教科書でデジタル回路に興味を持った高校生の、次の1冊にいいんじゃないか

  先生役のキャラクターと、生徒役のキャラクターがやりとりしながら進むマンガです。 先生役の説明のセリフ・文章が分かりやすく、図解の量・質も適切だと思います。一通りの説明が終わった後の、生徒役の要約も適切で、とても読みやすいです。 (先生役の説明がヘタだったり、マンガなのに図解が少なかったり、生徒役の物分かりが良すぎたりすると つらい…) 高校の情報Ⅰの教科書では「論理回路」という見出しで取り上げられているディジタル回路。本書の前半部分を読んでいくと、さらに理解が進むと思います。また、後半の順序回路の部分は高校の教科書にはありませんが、電子回路で記憶・状態を扱えるということを学ぶと、より深い理解に進むのではないかと思います。 分かりやすくて、高校レベルから積み上げられる内容で、とてもいい本だと思いました。 一点、注意が必要かもしれないのが、出版年が少し古いということです。解説の中で、ディジタル回路の設計の近年の事情に触れられている箇所がありますが、今はまた違っているかもしれませんね。