ちょっとしたきっかけがあって、昔読んだボナ植木氏(ナポレオンズ)の本の内容を思い出したので、図書館で借りてみました。
『書斎がいらないマジック整理術』
読み直してみて驚くのが、ボナ植木氏の文才です。いわゆる美文・名文というのではありませんが(ちょこちょこ自分の文への突っ込みが入るのは古臭い感じがしますが、それはご愛敬)、すいすい読めてわかりやすい。 洗練されたマジックショーが、よどみなく進んでいって、鮮やかに観客を驚かすのに似ている…そんな感想がわいてきました。
マジシャンの知性、技術、演出
同じくマジシャンの前田知洋氏のエッセイも、知的で謙虚、品があるのを思い出しました。「騙す」「驚かす」という性質を持つマジックを、娯楽として楽しめるものにするためには、礼儀や作法、言動や立ち居振る舞いに心配りが必要なんでしょうね。
ASCII.jpに『前田知洋の“マジックとスペックのある人生”』という連載を持っておられます。工学部出身の方らしい、電子機器についての解説が興味深いです。
驚くべき文の技
さらに、泡坂妻夫氏の多彩な小説も思い出します。自身の本名を冠した、厚川昌男賞というマジシャンを表彰する賞まで運営していた方です。『11枚のとらんぷ』は、マジックサークルを舞台にした連作で、個々の短編の出来も洒落ていれば、全体としての構成も素晴らしい。『奇術探偵曾我佳城』は、美しくも少し陰のあるヒロインが魅力的です。
技巧的な作品ばかりで、この方の作品を読むと「文章でこんなことができるのか!」と驚くこと必至です。「文章のマジック」と言ったら陳腐な表現になりますが…
マジシャンの書く物
アイデアを発想し、技術を身に付け、演出をし、観客の心を操るすぐれたマジシャンには、文才が備わるのかもしれないな、と思いました。
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