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4月, 2020の投稿を表示しています

それをお金で売っていい社会にしますか?

「ゆたかな社会」が投げかける公共性の問題 ガルブレイスの著書『ゆたかな社会』は、経済学者ガルブレイスが経済学の範疇を超えていろいろな論点を扱っていて面白い 本です。中にはインフレ懸念など現代ではあまりぴんと来ない話題もありますが、今にも通じる指摘も多く含まれています。 中でも、アメリカで進んだ「公共部門と民間部門の格差」については、考えさせられました。 誰もがテレビ・ラジオを持っているが、学校は貧弱。住宅はきれいなのに街路は汚い。最新式の自動車で公園にキャンプに出掛けるが、道路の舗装は悪く、ごみが落ち、広告だらけ。公園にたどりついても、小川は汚く、周囲から悪臭がする… 現代日本でも思い当たる光景ですよね。 貧弱な公共部門に対して現代アメリカが出した答え NHKで授業が放送されて、大変有名になった、サンデル教授。その著書『それをお金で買いますか 市場主義の限界』の中の一章は、ガルブレイスが投げかけた「こんなに貧弱な公共部門でよいのか」という問題提起に対して、アメリカ社会がどんな答えを出したのか、それがどんな問題を生み出しているのかを示しています。 アメリカ社会が出した答えとは、「公共部門の施設・設備に、民間がお金を出す。ただしそこに広告を出す代価として」です。いまアメリカでは、公立の学校に、刑務所に、パトカーに、民間企業の広告が出ているそうです。それによって、公立の施設は収入を得、施設やサービスの拡充の費用に充てているというのです。 それをお金で売っていいの? サンデル教授は、そのようなアメリカの事態を良しとしているわけではありません。公共的なものが持つ価値、「公共善」を腐敗・堕落させているのではないか、という問題提起をしています。 幸か不幸か、日本ではまだ「刑務所が広告スペースを販売した」という話は聞きません。が、広告のかたちこそしていないものの、いわゆる「命名権」も、意味としては同じですよね。公共の施設の名前を、私企業が、自社の知名度を上げるために、買っていますから。 サンデル教授はアメリカの命名権の事例も多数取り上げ、地域の歴史に根差している、公共の施設の名前を、売り払っていいのだろうか?という疑問を投げかけています。 公共施設の在り方について、とても考えさせられます。 本当にそれをお金で売っていいの?公正な取引であ

生活の可動範囲を広げる、まちの使い方

何をするにもお金がかかる 現代日本の、街の中、特に都市においては、何をするにもお金がかかります。座っているだけでも。誰からも怪しまれずに1時間座っていたい、本でも読もうかと思ったら、喫茶店に入って、最低でも数百円支払わないといけません。お店によっては快適でしょうが、それでも両手両足を伸ばして大きく伸びをするわけにはいきませんし、自宅でくつろぐように過ごせるわけではありません。 まして町中でちょっとそこらに腰掛けてとなると、落ち着いて過ごせる場所はかなり限られます。水筒からお茶を飲む、本を読む、伸びをする。町中で、無料で、そこまでくつろげるスペースがすぐに思いつくでしょうか 町中にも、緑地を確保するためのスペースがあるにはありますが、あまり広くはありません。そして、お決まりの「利用上の注意」が掲示されています。一人でくつろぐくらいなら支障はありませんが、事細かに使用上の注意が書いてあって、キャッチボールだのバトミントンだの、そういう遊びなどもってのほか、になっています。郊外の少し広めの公園ですら、そうです。 そう、いまや、大人も子どもも、広場で体を動かして遊びたい、と思ったら、お金を払ってスポーツクラブに入ったり、遊具のある遊び場など、専用の場所で過ごすことになるわけです。 誰の物でもない場所を、少しのあいだ借り受けて、大事に使う 本来、街は誰の物でもなく、公共のものです。公園はもちろん、道路の少しの隙間などでも、安全を脅かしたり、他の人の利用を排除しない限り、私人が自由に使ってよいはずです。 本書は、公共空間を私人が適切に利用する方法を伝え、またそれが街、公共空間の価値を増してくれるということを教えてくれます。 たとえば、夜、広い公園の芝生の上に、シーツをスクリーンがわりに広げ、プロジェクターで映画を上映し、数人の仲間と観る。都会の川辺のスペースにテーブルと椅子を持ち込み、食事を楽しむ。 公共の空間、施設を利用して私的な行為をしていますが、これは犯罪ではないし、不法行為でもありません。「グレーゾーン」という価値判断を加えるのさえ、早計でしょう。 生活の稼働範囲を広げる 本書ではこうした公共空間の使い方について、「生活の可動範囲を広げる」という表現をしています。私はこの表現がとても気に入りま

筋トレYouTuberの力を借りて、自宅で短時間でトレーニングする

 トレーニングにお勧めのYouTubeチャネル Fight Muscle Channel 格闘家としてプロの経験がある方が、トレーニングと格闘技のテクニックを教えてくれるチャネルです。 身体の部位ごとに動画を作っていて、トレーニング1種30秒、複数の種類のトレーニングを組み合わせて、合計5分から10分程度のトレーニングメニューを紹介しています。 動画の冒頭は説明です。身体のどこに効くトレーニングなのか、種目ごとのフォームや注意点。種目それぞれに、2方向からの動画による説明があるので、とても分かりやすいです。 説明の後は、実際に5分から10分のサーキットトレーニングです。YouTuberの方(※すごい体です)が一緒にやってくれますし、タイマーも画面に表示されるので、頑張れます。 自宅で手軽に運動する 2020年4月現在、日本の各地に緊急事態宣言が出され、不要不急の外出を自粛している中、健康のために身体を動かそうと思えば、限られた方法から選ぶことにならざるを得ません。 私は、以前記事に書いた通り、2019年暮れ頃からケトルベルをはじめたのですが( ケトルベルをはじめたい人に、はじめてみた初心者からひとこと )、幸い、まだ続いてます。4キロ、8キロに続いて、最近12キロのケトルベルを買い足しました。 おおよそ、「ジム通いをする時間や費用がもったいない」「でも出来ることなら良い体になりたい、痩せたい」という、しょうもない動機からケトルベルをはじめたのですが、それがいまや「自宅の狭いスペースでもできる」「時間がかからず、自宅での仕事の合間にもやれる」というメリットのおかげで、とても重宝しています。 楽しいケトルベルですが、それでも同じメニューが続くと飽きますし、「もうちょっと部位別に鍛えられるといいのかな」なんてことを考えもします。しかも、短時間で、狭いスペースで、少ない道具で出来るといいなあ…。 そこで、筋トレYouTuberの力を借りてみました。 短時間でやるトレーニングといえば、HIIT HIIT( High-intensity interval training: 高強度インターバルトレーニング 、別名タバタ)は、短時間に強度の高いトレーニングをインターバルをまじえながら行うトレーニング法です。この方式は、きちんとしたデータと理論に基づい

ジグソーパズル 手ごろな暇つぶし

ジグソーパズルで楽しく暇つぶし 暇つぶしに手ごろも楽しくもない、暇がつぶせればよい、のかもしれませんが、害が無いなら無い方がいいし、何か得るところがあればあった方がいいというものです。 そこへ行くと子どもの頃に楽しんだジグソーパズルは害がありません。これ、考えてみればおかしな遊びで、綺麗な写真や絵をわざわざバラバラに切り離し、それをまた組み立てて、元の写真や絵に戻そうというのですから酔狂な話です。 なんとなくでも、考えながらでも  ジグソーパズルの遊び方、ルールは今さら言うまでもありますまい。箱に印刷された手本の写真を見ながら、ピースを一つ一つはめていきます。隅や辺を先に作るのがセオリーでしょうが、ピースを拾ってながめれば、絵の中の特徴的な箇所が見つかるので、そこを先に組み付けていくのも楽しい。 画面が次第に出来上がっていくのは単純にうれしいです。そして中盤から後半にさしかかると、残りのピースが減るので簡単になるはずが、ヒントになる情報は減るので、だんだん難しくなっていきます。 遊んでいる最中は、なんどもじっくりと絵を見るので、見慣れたものの意外な色合いや、縦・横の長さの比率、曲線の曲率などにも考えが巡ります。 実在する場所の写真であれば、そこに行ったときの思い出が頭に上ってくるし、建築物が描かれていれば、その構造についてまで、あれこれと考えてしまいます。 最初から最後まで、ずっと楽しめる。あっという間に時間が過ぎていきます。 ジグソーパズルの難易度を左右するもの  ジグソーパズルをお店で選ぶとき、まず目がいくのは絵柄とサイズでしょう。好みの絵柄・写真が出来上がっていくのは楽しいですし、完成したパズルを飾るとなれば、サイズは重要ですから。 次に考えるのは難易度でしょうか。すぐに思いつく通り、ピース数は難易度を大きく変えます。100ピース以下だと、大人にとってはかなり簡単です。子どもでもすぐに慣れて、2,30分で完成できるようになるでしょう。 300ピースを超えると、数十分では完成しなくなるようです。3時間以上、場合によっては5,6時間かかるのではないでしょうか。1000ピースともなると、数日かかるのは当たり前になります。 また、メーカーによっては、各ピースの形状を工夫することで、難易度を操作しているようです。エポック社の製品説明に

高性能の紙飛行機を折って飛ばそう

高性能の紙飛行機を折って飛ばそう  著者は紙飛行機による飛行距離の世界記録を持つ人です。従来の記録が、「ダート」と呼ばれる「投げる」種類の紙飛行機であったのに対し、著者は「滑空する」紙飛行機、つまり「グライダー」で挑戦しました。その挑戦を通じて、飛行機の科学、紙飛行機の工作の詳細(紙の選び方、折り方など)について造詣を深めていったのでしょう。 その著者の設計による多数の紙飛行機の折り方が掲載されていて、見ているだけでワクワクしてきます。表紙の画像にあるような、世界記録を作ったグライダーや、ダート、その他フォローフォイルという、凧のようなおもしろい紙飛行機が作れます。 必要な紙はA4(またはレターサイズ)です。世界記録を作った紙飛行機の素材も紹介されていますが、普通のコピー用紙でも作れます。手軽に始められますね。 飛行機の様々なパラメータ 紙飛行機の話だけではありません。冒頭で、飛行機一般の科学が語られています。重力、揚力、抗力、推力のバランスで飛行機の飛び方・飛ばせ方が変わる、という一連の説明は、分かりやすい図とあいまって、とても楽しく読めました。 これを知っていれば、紙飛行機の設計・製作・飛行が、もっと楽しめそうです。 趣味で世界を広げる  著者の本業はテレビプロデューサーだそうです。本業とは別の、この紙飛行機による世界記録挑戦を通じて、たくさんの人に出会ったこと、たくさんの場所に出かけたことが語られています。 本書は、趣味を通じて世界を広げた話としても読めます。面白い時代だよなあと思いますね。 著者のYouTubeチャネル https://www.youtube.com/user/ThePaperAirplaneGuy