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9月, 2020の投稿を表示しています

Google Apps Scriptを始めるならこれ。しっかりした作りの入門書

気が付けば身の回りはGoogleだらけ。プログラムで制御しちゃおっかな  ふと気が付けば、身の回りはGoogleのサービスだらけでした。スマホこそAndroidではなくiPhoneですし、iPadも愛用している(どちらかというと)Apple信者な私なのですが。 検索サービスやGmailはもちろん、翻訳、Map、そしてこのブログも。スマートスピーカーさえGoogle Home miniですよ(最初にリビング用に買ったのはAmazon Echoだったのに)。これはもはやGoogleのサービス無しではいられない身体と言わざるを得ますまい。 こうなってくると、私もいちおうIT業界に身を置いている人間ですので、「プログラムで制御したら便利になるかも?」ということくらいは考えるわけです。 そんなわけで、この本『Google Apps Script完全入門』を買いました。 JavaScript、VBA、オブジェクト指向の基本を勉強したことがあれば、すいすい読める この本はとても丁寧に書かれています。Google Apps Scriptを開発・実行する手順や、ヘルプページの見方から始まり、JavaScriptの文法の説明を経て、Googleの各サービスのプログラミング方法の説明に進みます。最後に、トリガー、ユーザーインターフェース、ファイルとデータの操作、外部サイトへのアクセス、プロパティ、ライブラリと、アプリケーションを作るために便利な各種機能の紹介です。 JavaScriptの文法説明の箇所は、簡潔でありながらポイントが押さえられています。プロトタイプオブジェクトの説明の箇所など、一見して「だいぶ思い切った書き方だな」と思いましたが、「参照」の説明が前にちゃんとあるのもあって、必要十分な説明になっています。感心しました。  サービスの説明順も、SpreadsheetやGmailなど、オブジェクトモデルが分かりやすいもの・利用頻度が高いものから始まるので、読み進めやすいです。 私はもともとJavaScriptやオブジェクト指向の知識があり、Excel VBAのプログラムを書いたこともあるので、わりとスイスイと読めたのですが、そうした知識・経験が無い方も十分に読めると思います。 そもそもApps Scriptのオブジェクトモデルが分かりやすいというのもあるのかな? この分かりやす

作家的想像力・伊勢宗瑞・北条早雲

海音寺潮五郎氏の「作家的想像力」 上杉謙信を描いた小説『天と地と』で知られる作家・海音寺潮五郎は、史伝文学というジャンルを切り開いた人です(Amazonの 海音寺潮五郎氏のページ へ)。40年余り前に亡くなった作家ですが、近年、その作品が文春文庫で出版されなおしており、普通の書店の店頭でも見かけます。 氏は、その史伝作品の中で、しばしば「この頃の史料は乏しいが、小説にするなら作家的想像力を働かせて~のようにするところだ」という書き方をしています。史料に当たって、なるべく歴史上の事実がどうであったか調べた上で、小説に仕上げる、という文学観を持っていたとのこと。 調査を重んじた司馬遼太郎氏を激賞する一方、面白さを優先するアプローチをとる作家をかなり嫌っていたようで、池波正太郎氏の直木賞選考に関する言動を見るとちょっと面白いです。池波氏にしたら災難だったでしょうが… 伊勢新九郎盛時、のちに伊勢宗瑞 代表作と呼ぶに足る作品に事欠かない、ゆうきまさみ氏がいまビッグコミックスピリッツに連載している『新九郎、奔る!』は、北条早雲こと伊勢宗瑞を描いた漫画です。 といっても北条早雲になるはるか前、十代の新九郎少年が応仁の乱の時代にどう生きたか、というところが描かれている最中。ゆうき氏は沢山の人物を登場させ、それぞれの背景や思惑も丁寧に描いているので、とても読みごたえがあります。 今、作中で、新九郎少年は生まれ育った京都を離れ、伊勢家の所領である土地にやってきました。室町時代の混乱した統治状況に悩まされつつ、徐々に、確実に成長している様子が描かれています。 この所領での物語が雑誌に掲載される直前に、ゆうき氏はツイッターで「史料が残っていないので、想像力を働かせて描いている」という趣旨のつぶやきをされました。作家的想像力ですね。 これまでの様々な作品で、マンガ的な面白さがきちんとありながら、組織や運命に左右される人間たちのドラマを描いてきたゆうき氏なので、ツイートを読んだときにワクワクしたのを覚えています。 ところで、単行本は既に4巻まで出ていますが、新九郎はまだ若い。つい、これ完結するのかな…という心配をしてしまいます。もしかしたら描く範囲を決めているのかもしれませんね。作品の冒頭で、壮年の新九郎が、自らの運命を切り開く決戦に挑むシーンが描かれているので、そこまでは確実に描くと思

大岡越前と遠山の金さん

  名奉行といえば 子どもの頃、テレビ時代劇で『大岡越前』や『遠山の金さん』が繰り返し制作され、放送されたものでした。 一話完結の勧善懲悪のおはなしなので、子どもにも分かりました。「この桜吹雪が目に入らねえか!」という威勢のいい啖呵で締める金さんの方が、僕は好きでした。加藤剛演じる越前守は、ちょっと子どもには渋かった…とはいえ、今思えば、脇役が充実していて、こちらも良いですね。 実在の人物とは知りませんでした いや、実在の人物とは知っていたんですけど、「いつかどこかの劇作家が、適当に話を盛ったんでしょ?」くらいに思っていたのです。 最近、吉川弘文館の人物叢書『大岡忠相』と、山川出版社の日本史リブレット人『遠山景元』を読んで、そんな自分の思い込みをはるかに上回る実像を知ることができ、大変面白かった! 徳川吉宗のもとで 大岡忠相は、徳川吉宗に抜擢・重用され、長い吉宗の治世を支えた高級官僚でした。各種の制度を立ち上げ、運用した能吏だったとのこと。特に裁判記録の管理に勤めており、『大岡裁き』の語が残っているのもうなずけます。また経歴の中で、江戸だけでなく関東各地の裁判沙汰に関わり、各地に残された書類に署名があるため「名奉行」の印象が強く残ったのだとか。 吉宗の没後まもなく後を追うように病没したということで、なんとなく主従の信頼関係に思いをはせてしまいますね。 なお、忠相は大いに出世して、最後は石高1万石を超え、大名になったのだそうです。これもまたビックリしました。 民衆の生活を守るため、水野忠邦の天保の改革に反対  遠山景元のお父さんは、養子として遠山家に入り、学問にはげんで、幕府の試験(学問吟味)で首席を取ったことをきっかけに、大いに出世し、また活躍しました。 この方の通称が金四郎で、子の景元も名を継いだのだとか。江戸時代の当時から「遠山の金さん」という呼び方があったようで、これまた驚きです。 景元は、町奉行を勤める中で、老中水野忠邦の打ち出す統制的な施策(商店を減らさせる、飲食店を減らさせる、歌舞伎などを禁止する…)に対して「民衆の生活を破壊しかねない」という立場から反対をしました。前任者や同僚が老中によって排斥される中、景元は粘り強く事態にあたり、天保の改革は一部は行われたものの、一部は縮小・遅延させられたとのこと。 なるほど、これは「町民の実情を知る、町民の味方」