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吉川弘文館の人物叢書シリーズ

後世から語られる歴史上の人物 先日図書館でふと見つけて、保科正之を扱った新書を読んでみました。海音寺潮五郎の本で名前をみかけて、なんとなく知っていたので、もう少し掘り下げてみたくなったのです。 最初は、へえ、ほう、と思いながら読んだのですが、だんだん「これ、ほんとかいな」と感じたのを覚えています。保科正之は名君として、また徳川幕府の安定に功績があった幕閣として語られるのですが、あまりに絵に描いたような名君っぷり、褒めっぷりなので、変だなと思ったのです。改めてみると、会津藩がまとめた資料をもとに書かれていたのでした。藩祖や中興の祖を悪く書くはずがありませんね。 なんとなく興味をそらされたような気がしていたところへ、また図書館で『保科正之』を見かけたので、借りて読んでみました。今度は吉川弘文館の人物叢書の一つです。 とても面白かったので、続けて大岡忠相(越前)も借りてみました。千石あまりの御家人から、大名になっていく、忠相の官僚としての仕事ぶりが描かれていて、こちらもたいへん面白かったです。 一人の人物の生涯を、史料にあたりつつ、わかりやすく このシリーズ は、 一人の人物をとりあげ、史料にあたりながらも、分かりやすく描いています。保科正之や大岡忠相(越前守)のように、後世の人々によって脚色された人についても、史料から実像を描こうとしています。 さらに、そうした脚色が、どうして「その人」について行われたのか。そこも考察されていて、私のような素人にもありがたいです。大岡忠相は、評定所に町奉行・勘定奉行・寺社奉行として三十年あまりの長きにわたって参加していたため、全国の訴訟の書類に署名している。だから『名奉行』としてイメージを作られたのではないか…なんて、とても面白いですよね。一方、立身出世を遂げた忠相も、商人たちから借金をしており、お金には苦労していた…とあって、江戸時代の統治と経済について、さらに興味が惹かれます。  人物叢書と、日本史リブレットで、日本史をもっと勉強してみよう  人物叢書は、刊行開始から数十年の歴史があり、既にシリーズは300冊を超えています。天皇・貴族から、鎌倉時代の将軍、戦国時代の武将、江戸時代の将軍や官僚、近代のジャーナリストまで、多様な人を取り上げており、必ず興味を惹く人を見つけられると思います。 古いシリーズなの

すごい人の盛り沢山書評集

山形浩生氏といえば、多数の翻訳をなしている人です。本当に多い。すごく多産な方ですね。 なので、きっと知っている方も多いでしょう(いまさら私の零細ブログで紹介するのもためらわれるくらい…)。 それにしても、やみくもに多産なのではなく、訳す本の目利きがすごいです。 最近話題になった本でいえば、トマ・ピケティの『21世紀の資本』。 さかのぼるとポール・クルーグマン(ノーベル経済学賞を取るより前)、ローレンス・レッシグ(法学)も手がけています。 ケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』の翻訳もしています。 『断言』は、その山形氏の書評を集めた本です。長いキャリアの、前の方からも採録しているので、古い本も多い。 一般書店はもちろん、ネット通販の古本でも、手に入らないものがあります。 しかし、時間の経過にも耐えられる本の書評を選んだのでしょうね。 何冊か、頑張って手に入れてみて、読み始めましたが、今のところハズレはありません。骨のある本、読めば読書の喜びがあり、 確実に自身の力になる本。そんな本を手に入れたい方は、山形氏の目利きに乗ってみるといいのではないかと思います。