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学校におけるSaaSの普及のために、ユースケースを紹介する

感染症により強制された学校のデジタル化

 2020年、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、小学校から大学まで、一斉に休校になり、その後オンラインシステムなどを利用した遠隔授業の取り組みが始まりました。

休校が終わった後も、修学旅行や文化祭・体育祭などの各種行事の縮小やオンライン化が行われています。

この間、子どもたち・若者たちの教育を止めないために、様々な方が努力をしていました。感染症の拡大という緊急事態のもとで、十分な準備が出来ない中での取り組みですから、大変な苦労があったものと推測します。

Google for EducationなどのSaaS。「どう使うか」を誰が教えてくれるか?

あのような情勢下でしたから、なにより迅速さが必要だったわけで、SaaSの利用は、必然的だったろうと思います。

ところで、「よし、XX業務のシステムは、SaaSで行こう」となったら、最近のITエンジニアであれば、

  • ベンダーが公開しているオンラインのドキュメントを読んで基本の使い方を学ぶ
  • 使いながら徐々に応用的な使い方を調べたり、問い合わせたりする
  • 必要なカスタマイズをする
  • 随時組織内にノウハウを蓄積・共有する
…という風に取り組むことでしょう。専門知識や経験のあるITエンジニアであっても、失敗・間違いがあり得ることを覚悟しながら、前に進めます。

ITエンジニアではない学校の先生がた、教育委員会の方々が「教育でIT・SaaSを使う」となったのですから、取り組み当初、その胸中ではかなり不安だったのではないかと推察します。

Webサイトや書籍で、SaaSの機能の説明を読んでも、「それをどう使ったらよいのか」「どう使ったら安全なのか」想像するのは簡単ではありません。

「ユーザー(潜在的な顧客・ユーザーも含む)に対して、そのツールのユースケースを語る」という役割の人が、ことSaaSについては、いまだ足りていないのかもしれない、と思います。 

ユースケースに注目した書籍

『今すぐ使える!Google for Education』は、Google for Educationの利用拡大・普及に努めている方々が書いた本で、Googleの各サービスを機能ごとに紹介するのではなく、ユースケースに焦点を当て、章に立てています。

学校で、先生や児童・生徒が「どう使うか」に焦点を当てているわけですね。

ITエンジニアの視点でみると、物足りないようにも思えますが、これはユーザーである先生がたからすれば、大変良い本だと思います。

SaaSの本を出す難しさと、それでも本を出す意義

SaaSは、機能の拡張・変更が早く(サービス自体が廃止されることも!)、書籍化には向かない(スピードが足りない)側面があります。執筆時には最新情報だったことが、出版されたときには既に古くなっている、ということが当たり前に発生するのです。

この本を書いた方々は、当然、そうした事情を知っておられたでしょう。それでも書き、出版した、ということは、大変意義深いことだったと思います。

今からデジタル化に取り組む先生方・学校・その他の関係者の方にとってはもちろん、改めてこれまでのデジタル化の取り組みについて見直そうという場合にも、ユースケースベースの本なら「ITをどんな場面で使えるか」「ITで何ができるか」のヒントが(たとえGoogle for Educationを利用しない・できない場合でも)得られるからです。

一般的なユースケースのその先へ

 Googleの各種サービスを使い始めると、カスタマイズしたり、自分用のツールを作りこんだりしたくなるはずです。MS Officeを使い始めた後に、テンプレートやマクロを組みたくなるのと同じです。こうなると、ユースケースベースの本では足りないので、オンラインのドキュメントを読んでいくことになります。

しかし、オンラインドキュメントには、短時間に概要を掴むのが難しいという側面があります。

ですので、書籍 『詳解! GoogleAppsScript完全入門』をお勧めしたいです。基本の部分の説明、各ツールのプログラミングモデルの説明が簡潔・明瞭で、Officeマクロの経験がある方ならすぐにGoogleのスクリプト(Google AppsScript)を書けるようになるのではないでしょうか。

 

 名前が似ているので注意して欲しいのが、Google Cloud Platformは別ものだということです。こちらは完全にITエンジニアがシステムを組むためのサービスですね。

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