あの時、読み切れなかった自分に代わって、今、読む
青少年の時代に、読もうと思って読み切れなかった、古典・名作は無いでしょうか?背伸びして手に取ったものの、まだ若い身には分からないことが多く、十分に読みこなせなかった。また格調高い訳文にやっつけられて、読み切れなかった。そんな本です。
近年、各出版社が文庫で(会社によっては文庫のシリーズとして)古典の新訳を出しています。
大人になって経験を積んだからこそ、読めるようになった部分が必ずあります。
光文社古典新訳文庫
光文社古典新訳文庫は、新訳の文庫のシリーズの中でも代表といえるでしょう。大作から短編集まで、哲学から小説、はてはSF小説まで。イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ、今見たら、方丈記の現代語訳までありました。実に幅広く取り上げています。このシリーズを順に読んでいくと、教養が身に付くんじゃないでしょうか。いや、そんな「教養が身に付く」みたいな考え方はしなくてもいいですね。読書の愉しみに事欠かない生活が送れるのではないでしょうか。
私はスピノザの『神学・政治論』(上・下)を読みましたが、とても読みやすかったです。翻訳の良し悪しを判断する語学力は私にはありませんが、日本語として読みやすく書かれていると思います。また、字形、ページのレイアウトなどのデザインも、現代的に工夫されていると感じました。
残念なのは、普通の書店ではこのシリーズのコーナーがさほど広くないところです。岩波文庫と同等か、それ以上のスペースをとってもいいんじゃないかなあ、と思いますが、これはブランド力の差かもしれません。今後、もっと認知されて、人気が出て欲しいところです。
新潮文庫
新潮文庫は夏休みになると青少年向けに文庫の販売促進をかけますよね。そこで毎度古典を取り上げるので、きっとポリシーがあるのだと思います。その新潮文庫さんが、2019年の夏に『ロビンソン・クルーソー』の新訳を出していて、へえ、と思って見直しましたが、地道に新訳を出してるんですね。O・ヘンリーの傑作選とか。とても読みやすい。短編ごとに文体も工夫してあって、翻訳者の方の丁寧な仕事を感じます。
新訳のレーベルを作っている光文社と違い、大々的にマーケティング、宣伝をしているわけではないようですが、こういう取り組みは読者としてはとてもありがたいです。
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