横山光輝『平家物語』
日本で三国志の人気が高いのは、もとの物語の魅力に加え、たくさんの作家が小説家し、またたくさんのメディアで映像化・ゲーム化されてきたからですが、横山光輝氏の漫画がその一端を担ったのも間違いないところではないでしょうか。シンプルな線で描かれるキャラクター、背景は、現代の劇画化した漫画と比べると絵本のようでさえあります。しかし、それがむしろ物語の「語り」を強調して、長く人気を保つ力になっていると思います。
その横山氏がマンガ日本の古典で取り組んだのが『平家物語』。平氏の興亡から源氏の勝利までを描く、軍記ものです。平清盛、重盛、源頼政、源頼朝、木曽義仲に源義経と、 おなじみの侍たちが戦いを繰り広げていきます。
「見開き2ページを使う一枚絵」のような、劇的な表現はありません。 淡々とした調子で物語は進みます。ですが、そこになんとも古典的な味わいを感じます。
竹宮恵子『吾妻鏡』
文庫本上中下巻の巻末にある著者のあとがきによれば、大変な資料調べの上で描かれていることが分かります。たとえば建物ひとつとっても、「日本の建築物は、外国のそれよりも保ちが悪いので時代によっての違いが細かく、平安時代から鎌倉への移行期には重なり方も微妙で、調べる程に悩みは深くなるばかり。」吾妻鏡は鎌倉時代の編年体で書かれた歴史書。上記のような手厚い調べのもと、それでいて単なる事柄の羅列ではなく、人物のドラマとしてもきちんと描かれている。本当に大変な作品だと思います。文庫3巻を二度・三度と読めば(※一度ではとても読み切れるものではないです)鎌倉時代の政治・軍事について一定の見識を得られるのではないでしょうか。
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