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新書で学ぶミクロ経済学


読みやすいミクロ経済学「入門の入門」

「入門の入門」というタイトルで、ミクロ経済学のテキストが3冊、岩波新書で出版されています。
  • ミクロ経済学入門の入門
  • ゲーム理論入門の入門
  • 経済数学入門の入門
タイトルのとおり、「入門の入門」で、どれも前提知識がほとんど無くても大丈夫。図や例を駆使して、とても分かりやすい。著者のお三方は、皆、30代から40代と若く、アメリカの大学で研究した経験があるせいか、 若々しいきびきびした文章で、非常に読みやすいです。 新書という軽量なフォーマット(3冊とも150ページほどにまとめられています)と、よく合っていると思います。

入門の入門の先についての配慮も

 3冊ともに、巻末に「次にどの本を読んだらよいか」を紹介しているのがとてもいい。単なる参考文献リストではなく、それぞれがどういう内容、レベルなのか説明してあるものです。
入門の入門で興味を持った人、元からもっと上のレベルを目指している人にとって、こうしたブックガイドはありがたいですよね。

資格試験・公務員対策の「準備」に最適

経済学は、中小企業診断士の資格試験に含まれていますし、公務員試験にも含まれています。
それらの試験で問われることは、経済学部で学んだ人にとっては「きわめて難しい」というものではないですが、別の学部で学んだ方にとってはなかなかとっつきにくい。
試験に向けた勉強方法としては、大学1年生向けの経済学の教科書から入るのが王道でしょう。が、近年の経済学の教科書は厚くなる一方なので、初学者にとってはなかなかハードルが高いですよね。
試験対策を効率的に示してくれる公務員試験予備校や、中小企業診断士予備校は、いきなり飛び込むのは、勇気と、何よりお金がいります。
この3冊は、そうした資格試験対策に取り組みたいけれど、経済学の入り口で躊躇している人にとって、大いに学習のハードルを下げてくれるものです。大学生はもちろん、社会人の皆さんにも広くお勧めしたいですね。

補足:坂井豊貴氏

『ミクロ経済学入門の入門』の著者、 坂井豊貴氏は、他に著書も多数出されています。読売新聞の書評も書いておられます。そのほか、不動産コンサルティング会社でエコノミストを勤めたり、ビットコインに投資していたりと、多岐にわたる活動をしておられます。
今後注目の一人なんじゃないかと思っています。

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