地元から世界へ
私が住む市には、サッカー(男女)、ラグビー、アメリカンフットボールのチームがあり、市を挙げて応援に取り組んでいます。
サッカーチームには元日本代表が所属しているので、「この町は、サッカーというスポーツ、このクラブを通じて、日本のトップレベル、ひいては世界とつながっている」と感じることができます。
一方で、クラブの選手が近所の小学校にやってきてイベントをしたり、試合前に最寄り駅でサポーターがチラシを配ったりして、身近でもあります。
この「地域に密着しながら、日本と、世界とつながっている感覚は、まさに幸福だ」という、タイトルへの共感があって、この本を手にしました。
著者は格差論で知られる経済学者
社会の格差には多様な面があり(経済的な格差だけでなく、文化的な格差もある)、複雑な問題です。その問題に取り組んでいる学者さんなので、多面的で面白い分析を期待したいところですよね。
様々なスポーツによる地域振興
第一章はスポーツにおける中央集権に対する批判です。「地元スポーツ」の価値と対置したいのでしょうが、もっと少なくてよかったんじゃなかろうか。ひがみっぽい話になっていると思いました。
以後の章では、野球、サッカー、バスケットボールのそれぞれのプロリーグの状況、チームの経営状況の記述、その他さまざまなプロスポーツに関する話題が幅広く取り上げられています。成功事例として複数のチームが挙げられているほか、「ダービーマッチ」などスポーツに関わるキーワードが取り上げられているので、今後この分野について調べていく上で参考になりそうです。
幅広い記述。少し掘り下げ不足か
いろいろなスポーツについて、幅広く取り上げているせいか、本来のテーマである「チームと地域との関わり」という点についてみると、不十分だと思いました。
特に、「地域との関わり」という点についていえば、Jリーグの地域での育成を視野に入れた制度設計は特筆するべきことだと思うのですが、ほとんど触れられていません。
一方、経済学者らしく、地方のチームの財政面の課題について触れてあるのはさすがだと思いました。ただ、それにしたところで、Jリーグチームの財政面の改善策が「登録選手を若干増やして、週2回のゲーム開催を3回に増やす」というものがあったり…。さすがにこれは無理があるでしょう。幅は広いのですが、主要なテーマに対する掘り下げは十分ではないな、と思いました。
次に向けて
プロスポーツといえば野球くらいしかなかった頃とは、本当に時代が変わったと思います。スポーツのプロチーム、プロリーグの経営論や、地域活性化論は、これから研究が進んでいくでしょう。本書は記述が幅広いので、そうした分野に取りかかる第一歩として優れていると思います。
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