スキップしてメイン コンテンツに移動

建築知識 2019年10月号 パースと背景画の最新技術


「プロの描き方を学ぶ」ための特集から、「プロのものの見方」を学ぶ 

絵を描く人たちが、ツイッターでこの雑誌のこの号を話題にしているのをちらっと見て、気になったので購入しました。
私は絵を描きません。わかりやすい、うまい絵をすらっと描けるようになりたいなあとは思いますが、そのために必要な訓練を思うと、なかなか本腰を入れて勉強に取り組むことが出来ません。
にもかかわらずこの雑誌を手に入れたのは、分析的に・教えるために描かれた「描き方」は、「ものの見方」を含んでいるからです。
僕は「プロのものの見方」を知りたくなったのでした。

建物を含む絵、建物の構造を表す絵、建物の中の人間の動きを表す絵

これはすごい記事でした。想像していたのよりさらにすごい。

建築の雑誌ということで、建物に関連する絵の描き方が取り上げられています。町の中にその建物が建ったらどう見えるか、建物の中の間取りはどうなるか、建物の中で人が暮らしたらどうなるか。建築家が頭の中で構成する空間を、絵に表し、他の人(顧客・施主や、大工さん)に分かりやすく伝えるためのノウハウが、明確な理論と、豊富な作例で示されています。

とにかく大変な情報量なのですが、それでいて見やすいのは、雑誌の紙面のレイアウトや、情報の提示の仕方がとてもスマートだからでしょう。
これはイラスト・漫画を描く人だけでなく、Webデザイナーの方や、インフォグラフィックデザイナーの方、さらには自分のプレゼン資料をより分かりやすく・インパクトのあるものにしたい方まで、視覚的なコミュニケーションに関わる人の多くに参考になるのではないでしょうか。

 なお、雑誌『建築知識』は、2018年12月号「一生使えるサイズ事典」も話題になったようです(ねとらぼの関連記事)。私は建築とは全然かかわりのない仕事をしていますが、こういう出会いがあるから雑誌は面白いですね。

付記:風景画の分析

そもそも私が「絵を描くための分析的な手法」について興味を持ったのは、NHK教育テレビで増山修氏の番組をたまたま見たのがきっかけでした。増山氏はアニメの背景をやっていた人なので、(建物の有無に限らず)風景についての手法を紹介しています。こちらもとても面白いですよ。


コメント

このブログの人気の投稿

プロダクトデザイナーの頭と目と手

月を撃つ NHKの番組『プロフェッショナル 仕事の流儀』で奥山清行氏の仕事ぶりを見ました。それで印象に残っていたので、氏の著作『ムーンショット デザイン幸福論』を 図書館で見つけた時、すぐに借りてみることにしたのでした。 読んでみて分かったのは、「プロダクトデザイン」という仕事は、「モノの外見をスマートな絵で描いてみせる」という範囲に留まるものではなく、「人が使うモノを、きちんと機能するモノとして、工業生産するモノとして、描き出す」仕事なのだということ。 実現するためには、沢山の人と協働する必要があり、組織やプロジェクトを牽引するディレクターとしての役割もあるのだなあ、すごい技能と腕力を持った人の仕事なのだなあと感心しました。 義足のデザイン プロダクトデザインという仕事について関心を持つようになって、次に図書館で見かけて借りてみたのは、山中俊治氏の『カーボン・アスリート』でした。 陸上競技に取り組む人の義足をどうデザインし、どう作るか。義足を付ける本人はもちろん、義肢装具士(※)との対話には、なんとなく緊張感が漂っています。これがプロの凄みというのでしょうか?一人ひとり違う障害、同じ人でも変わっていく肉体に、義足というプロダクトはどうあるべきなのか。挑戦を楽しんでいるようでもあり、苦しんでいるようでもあります。 『カーボン・アスリート』だけでなく後述の本も含め、山中氏の本にはデザインスケッチが多数掲載されています。描かれたスケッチは、線の美しさとは別に、機能性を感じさせる美しさがあり、見ていて圧倒されます。 なお、この本は、慶応大学の教授として取り組んだ、学生の育成・指導の記録として読んでも面白いです。 優秀な学生が本気で一流の教師とプロジェクトに取り組む様子は、正直言うと(これは大変だったろうなあ)と思ってしまいますが、羨ましくもあります。僕も若いうちにこれくらい頑張っておけばよかったなあ…。 プロダクトデザイナーの目と手 山中氏の別の本『デザインの小骨話』は、多数のデザインスケッチと、短いエッセイからなる本です。雑誌連載をまとめた本ですね。デザイナーが頭と目と手をどう使っているのか。短いエッセイに端的な表現に詰め込まれていて、なかなか軽々と読み進ませないのが凄い。デザイナーはこんな風にモノを見、描いているのだなあ、とつくづく感心しました。 観察

「情報Ⅰ」の教科書でデジタル回路に興味を持った高校生の、次の1冊にいいんじゃないか

  先生役のキャラクターと、生徒役のキャラクターがやりとりしながら進むマンガです。 先生役の説明のセリフ・文章が分かりやすく、図解の量・質も適切だと思います。一通りの説明が終わった後の、生徒役の要約も適切で、とても読みやすいです。 (先生役の説明がヘタだったり、マンガなのに図解が少なかったり、生徒役の物分かりが良すぎたりすると つらい…) 高校の情報Ⅰの教科書では「論理回路」という見出しで取り上げられているディジタル回路。本書の前半部分を読んでいくと、さらに理解が進むと思います。また、後半の順序回路の部分は高校の教科書にはありませんが、電子回路で記憶・状態を扱えるということを学ぶと、より深い理解に進むのではないかと思います。 分かりやすくて、高校レベルから積み上げられる内容で、とてもいい本だと思いました。 一点、注意が必要かもしれないのが、出版年が少し古いということです。解説の中で、ディジタル回路の設計の近年の事情に触れられている箇所がありますが、今はまた違っているかもしれませんね。

映像制作の基礎を学ぶなら、放送大学『映像コンテンツの制作技術』

映像制作を学びたい スマートフォンやアクションカメラで撮影した動画を、うまく編集して、より面白い動画に作りこみたい、と思ったとき、意外に学びにくいことに気付きました。 書店では、特定の製品やソフトウェアのガイド書籍はすぐに見つかります。「YouTuberになろう」という本も増えました。が、より広く「映像制作」というテーマになると、途端に数が少なくなり、ハイアマチュアやセミプロを目指す人、プロの人の情報収集向けの雑誌や書籍がちらほら、という感じになって見えます。 中間(初心者が入門して、中級者になるまでのガイド)が少ない。 『映像コンテンツの制作技術』 そんなときに見つけて、受講してみたのが放送大学の『映像コンテンツの制作技術』という授業です。全15回で、カメラやマイクのようなハードウェア、映像編集・音声編集のためのソフトウェアはもちろん、企画や脚本、絵コンテまで、幅広く取り扱っています。 幅が広い分、底が浅いのでは…と思いきや、紹介されている機材は本格的で、現代の機器・ソフトウェアでどんなことが出来るのか、ざっと把握することができます。  逆に、特定の機材やソフトの使用方法は簡単に触れるだけなので(たとえば、編集の回にはFinalcut ProやDaVinci Resolveの画面がちらっと出てきます)、別にガイド等を手に入れる必要があります。 「プロは何をしているのか」「今の時代、どんなことができるのか」を知る 「今の時代の(プロ向けの)機材で、どんなことが出来るのか」「プロはどういう工夫をして、狙った映像を作っているのか」を知っていると、手元の機器で何をどうしたらいいのか、考えるヒントが得られると思います。 放送授業の視聴方法 私は放送大学の学生なので、放送授業のオンライン配信で視聴していますが、放送大学・大学院のテレビ(BS232ch)で、火曜日 16:30~17:15に放送されています(2022年10月現在)。 なお、テキストも市販されていて、 取扱書店 で購入できるほか、 Amazon などでも買えます。 ただ、やはり映像コンテンツの授業なので、テレビ放送を見るほうをお勧めしたいですね。